これから『養生訓』を、少しずつご紹介していきます

2020年4月10日

養生訓 貝原益軒著(蓮村誠編訳)

『人のからだは貴い』

人のからだは、天と地をはじまりとし、父と母をもととしています。

天地と父母の恵みを受けて生まれ、また養われたわが身ですから、わたしだけのものではありません。

天地の賜物であり、父母の残したからだですから、つつしんでよく養い、そこなわないようにし、天寿を長くたもつべきです。

これが、天地・父母に仕える孝の本なのです。

からだを失っては仕えることができません。

わが身であるものは、たとえ小さな皮膚や髪の毛でさえ、父母から受けたものですから、むやみにそこなうことは不孝です。

ましてや大いなる命を、わがものとしてつつしまず、飲食や色欲のほしいままにして、元気をそこない、病を求め、もって生まれた寿命を短くして、早く失うことは、天地・父母の最大の不孝で、愚かなことです。

人として生きるなら、ひとえに天地・父母に孝をつくし、人として守るべき道を進み、義理に従ってできるだけ幸福になり、長生きをして、喜び楽しむことが、ほんとうの人の願いというものです。

このようになろうとするのであれば、まずいま述べたことをよく考え、養生の道を学び、わが身を大切にすることです。

これが人生でいちばん大切なことです。

人のからだはこの上なく貴く重いものであり、世界の何ものにもかえがたいものではないでしょうか。

それなのに、これを養う術を知らず、欲をほしいままにして身をほろぼし命を失うなど、これ以上愚かなことはありません。

命と私欲のどちらが大切かを考え、毎日の私欲をつつしみ、私欲の危険を、まるで薄氷の上から深淵をのぞむように恐れるならば、長生きし、いつまでもわざわいをまぬがれるでしょう。

人生は楽しむべきです。

命が短ければ、世界の富を得てもまったく意味がありません。財産を山のように積んでも意味がないのです。

そのようなことですから、道に従い、からだを大切にし、長寿であることがもっとも大きな幸福なのです。

そのため、中国の「尚書」では長寿を五福の一つとしています。長生きこそ、幸福の根本なのです。

 

 

 

養生訓

Posted by hicyoko